介護施設BCPのひな形と使い方の注意点

結論から述べます。介護施設のBCP(業務継続計画)は2024年度介護報酬改定により義務化され、2025年4月1日から未策定の事業所への減算が適用されています。ひな形はあくまで「出発点」であり、そのまま提出しても減算を回避できるとは限りません。自施設の実態に合わせた記載が求められます。


BCPひな形を使う前に知っておくべき減算の仕組み

厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(p.49)によると、BCP未策定事業所への減算幅は次のとおりです。

  • 施設・居住系サービス:所定単位数の100分の3に相当する単位数を減算
  • その他のサービス:所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算

適用除外となるのは「居宅療養管理指導」と「特定福祉用具販売(介護予防含む)」のみです(同p.49)。それ以外のサービスは対象となるため、自施設のサービス種別を確認してください。

また、BCPを策定しても指定権者(都道府県・市区町村)への体制届等を適切に届け出ていない場合、減算型として扱われるおそれがあります。届出様式はサービス種別や自治体によって異なるため、所轄の指定権者サイトを必ず確認してください。


ひな形の種類と入手先

介護施設のBCPひな形として広く参照されているのは、主に次の3種類です。

1. 厚生労働省公表のひな形

厚生労働省は感染症BCP・自然災害BCPそれぞれのひな形(Wordファイル)を公表しています。項目立てが省令・解釈通知に沿っており、記載漏れが生じにくい点が特徴です。ただし、全国共通の汎用フォーマットであるため、施設規模・立地・職員体制に応じた肉付けが必要です。

2. 都道府県・市区町村が公表するひな形

自治体によっては、地域の実情(ハザードマップ・避難先・協定先等)を反映した独自ひな形を公表しています。所轄の指定権者が公表しているひな形がある場合は、そちらを優先的に確認することをお勧めします。

3. 業界団体・法人が公表するひな形

全国老人福祉施設協議会など業界団体が会員向けに提供しているひな形もあります。施設類型に特化した記載例が含まれる場合があり、参考になることがあります。


ひな形をそのまま使うと起きやすい問題

ひな形は「記載すべき項目の一覧」として有用ですが、そのまま提出することには次のようなリスクがあります。

問題1:施設固有の情報が空欄のまま

ひな形には「○○を記載する」という指示欄が多く含まれます。担当者名・連絡先・代替施設名・協定先・備蓄量などを実際の情報で埋めなければ、形式上は書類が存在しても実効性のある計画とは言えません。指定権者の審査で不備を指摘されるケースも想定されます。

問題2:ハザードリスクが地域実態と合っていない

自然災害BCPでは、自施設が立地するエリアのハザードマップ(洪水・土砂・津波等)を参照し、想定される災害種別を特定することが求められます。ひな形の「想定災害」欄を空欄にしたまま、または全国共通の例示をそのまま残した状態では、実態に即した計画とは評価されにくい場合があります。

問題3:研修・訓練の計画が未記載

運営基準の解釈通知(老企第25号)では、研修・訓練を「定期的(年1回以上)」実施することが求められています。また、名古屋市が公開している資料によると、特別養護老人ホーム・老人保健施設・介護医療院等の施設系サービスでは研修・訓練とも年2回以上、短期入所では年1回以上が実務上の基準とされています。ひな形に研修・訓練の実施計画欄がある場合、具体的な日程・内容・担当者を記載しなければ計画として機能しません。

問題4:見直しサイクルが設定されていない

運営基準(平成11年厚生省令第37号第30条の2等)は「定期的に見直しを行い、必要に応じて変更する」と定めています。法令上、具体的な見直し頻度の数値は規定されていませんが、施設の状況変化(職員異動・設備更新・協定先の変更等)に応じてBCPを更新する体制を整えることが求められます。ひな形に「次回見直し予定日」欄がある場合は、空欄にせず記入してください。


ひな形をカスタマイズする際のチェックリスト

以下の項目を確認しながら、ひな形に自施設の情報を反映させてください。

基本情報

  • 施設名・所在地・サービス種別・定員が正確に記載されているか
  • 作成日・最終更新日が入っているか
  • BCP統括責任者・担当者の氏名・連絡先が記載されているか

リスク想定(自然災害BCP)

  • 自施設のハザードマップを参照し、想定災害を特定しているか
  • 浸水深・土砂災害警戒区域等の情報を記載しているか
  • 避難先・避難経路が具体的に記載されているか

リスク想定(感染症BCP)

  • 感染拡大時の職員確保方針が記載されているか
  • 感染者・濃厚接触者発生時の業務継続手順が記載されているか

体制・連絡先

  • 緊急連絡網(職員・家族・協力医療機関・行政)が最新の情報か
  • 代替要員・外部応援の確保方法が記載されているか

備蓄・設備

  • 備蓄品の品目・数量・保管場所が記載されているか
  • 非常用電源・通信手段の確認方法が記載されているか

研修・訓練

  • 年間の研修・訓練計画(日程・内容・担当者)が記載されているか
  • 施設系サービスの場合、年2回以上の計画になっているか

見直し

  • 次回見直しの時期・担当者が記載されているか
  • 状況変化時の変更手順が記載されているか

指定権者への届出を忘れずに

BCPを策定しても、指定権者への体制届等を適切に提出しなければ、減算型として扱われるおそれがあります。届出のタイミング・様式・添付書類はサービス種別や自治体によって異なります。所轄の指定権者(都道府県・市区町村)の担当窓口またはウェブサイトで最新の様式を確認し、事業者ご自身で作成・提出してください。


トドケデ介護でBCPの作成をサポート

BCP策定に必要な項目の整理から、自施設の実態に合わせた記載内容の検討まで、トドケデ介護では無料でサポートしています。ひな形のどこから手をつければよいかわからない、記載内容に不備がないか確認したいという場合は、お気軽にご相談ください。

介護施設のBCP対応に関する全体像は、BCP対応完全ガイドもあわせてご参照ください。

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まとめ

  • BCP未策定の場合、施設・居住系サービスは所定単位数の100分の3、その他のサービスは100分の1の減算が2025年4月1日から適用されています
  • ひな形はあくまで出発点であり、自施設の実態に合わせた記載が求められます
  • 施設系サービスでは研修・訓練を年2回以上実施する計画を記載することが実務上の基準とされています
  • 法令上、BCPの見直し頻度の具体的な数値は規定されていませんが、定期的な見直しと状況変化時の変更が求められます
  • 策定後は指定権者への体制届等の提出も忘れずに行ってください

著者:丸岡 峻(元京都市消防局13年・現役防災士(日本防災士機構認定)・消防設備士・危険物取扱者) 著者プロフィール


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な対応については、所轄の指定権者や専門家にご相談ください。